ご高齢のご家族の介護に、疲れてしまっていませんか?
介護は「誰にでもできる」と言われる反面、実はかなりの重労働です。正直な話をすると、現役で介護業務に携わっている人でも「面倒だ」と感じることがあります。
声かけひとつをとっても、いちいち気を遣いますし、相手に合わせた介護を考えるのも一苦労です。
経験者でもこのような状態なので、介護経験のないご家族が在宅で高齢者の介護をするのは、とても大変なことだと分かると思います。
在宅介護の情報を探すと、「介護される人」のための情報はたくさん見つかりますが、「介護する家族」の心と体に目を向けた情報は、まだまだ少ない印象です。
ですが、実際の現場では、介護する人が疲れきってしまい、体調を崩したり、家族関係がぎくしゃくしてしまうケースが少なくありません。
この記事では、介護する家族自身のセルフケアに焦点を当てて、「なぜケアが必要なのか」「どんなサインに気づけばいいのか」「今日からできる工夫」などを、在宅介護の経験と作業療法士の視点を交えながらお伝えします。
在宅介護で介護者のケアは必要か?
在宅介護においては、「介護者のケアは絶対に必要です」。
在宅介護は、介護に慣れていない人が行うことが多く、どうしても「要介護者を優先しなければ」という意識になりがちです。
しかし、介護を続けていくうえで「柱」になるのは、介護する家族の心と体。
介護者が疲れ切ってしまえば、どれだけ良いサービスが整っていても在宅介護は続きません。
誤解を恐れずに言ってしまうと、「介護者が元気でいること=最大の介護サービス」です。
「自分のことは後回しにしないといけない」と感じている方ほど、意識してセルフケアの時間を確保することが、結果的に在宅介護を長く続けることにつながります。
意識したい「がんばりすぎサイン」
介護のがんばりすぎは、本人が気が付かないうちにゆっくりと進行するのが厄介なところです。
「眠りが浅く、夜中に何度も目が覚める」「食欲が落ちてきた」「頭の中がいつも介護のことでいっぱいで、趣味やテレビを楽しめない」「ちょっとしたことでイライラしてしまい、自分を責めて落ち込む」などは、代表的ながんばりすぎサインです。
また、「他の家族や友人に会う気力が出ない」「誰にも頼めない、頼ってはいけないと思い込んでいる」状態も要注意なポイントと言えます。
真面目な人や優しい人ほど、こうしたサインに気づいても、「まだ大丈夫」と頑張ってしまうことが多い印象です。
このような時は、我慢するのではなく、「そろそろ休息やサポートが必要」という体と心からのメッセージとして受け取ってあげてください。
1日5分でできる自分の時間のつくり方
唐突に「自分の時間を持ちましょう」と言われても、在宅介護中は現実的に難しく感じる方も多いのではないでしょうか。
そこでおすすめしたいのが、「1日5分からのセルフケア」です。
たとえば、朝に温かい飲み物をゆっくり一杯だけ飲む時間を決める、寝る前に好きな音楽を一曲だけ聞く、5分だけ深呼吸とストレッチをするなど、小さな「自分だけの儀式」を作るイメージです。
スマホを触りながら漫然と過ごす時間ではなく、「この5分は自分を回復させる時間」と決めてしまうことで、短くても心の区切りになります。
最初から長い休みを確保しようとせず、まずは5分から始めることが、結果的に介護を続ける力につながっていきます。
自分ひとりで何とかしようとしすぎないことも、大切なセルフケアの一つです。
ここからは、「人に頼る」「専門機関に相談する」という視点で、自分を守る方法を見ていきましょう。
家族・サービスに「助けを頼む」言い方のコツ
「助けを求めるのが苦手」「迷惑をかけたくない」と感じて、一人で抱え込んでしまう方はとても多いです。
誰かに頼みごとをするときのコツは、「具体的に」「期間や回数を区切って」お願いしたいことを伝えることになります。
たとえば「いつでも手伝って」ではなく、「今月だけ、週に一度だけでも通院付き添いをお願いできる?」というように伝えると、相手も受け入れやすくなります。
また、「あなたが来てくれると本人も安心するから、力を貸してほしい」と、相手の存在がどれだけ助かるかを言葉にすることも大切です。
家族だけでなく、ケアマネジャーやヘルパー、デイサービスの職員にも、「ここが一番しんどい」「ここを少し軽くしたい」と正直に相談してみましょう。
お願いの後には、「必ず感謝の言葉を伝える」ことを忘れないでください。
OTとして相談に乗っていると、家族間で「お願い」をしたあとに、感謝の言葉をめぐって行き違いが生じる場面をよく目にします。
「言葉にしなくても感謝の気持ちは伝わっている」と考えている人は、意外と多いものですが、実際には、気持ちは言葉にして伝えなければ相手に届きません。
言葉が足りないことで感謝が伝わらず、少しずつ不満がたまっていき、その結果、大きなトラブルにつながってしまう現場を目にすることも珍しくありません。
長く在宅介護を継続するコツは、家族や親族、ケアマネジャーとより良い関係を構築することです。
しっかりと自分の気持ちを相手に伝え、穏やかな気持ちで介護を行いましょう。
心が限界のときに相談できる窓口(地域包括支援センターなど)
「もう限界かもしれない」と感じたときに、一人で抱え込まない仕組みを知っておくことも重要です。
身近な窓口としては、お住まいの地域の「地域包括支援センター」があります。ここでは、介護保険のことだけでなく、家族関係や生活不安、虐待の心配なども含めて幅広く相談できます。
また、ケアマネジャー、かかりつけ医、訪問看護師など、すでに関わっている専門職に「実はこんな状態で…」と打ち明けるのも立派な一歩です。
心身の不調が強い場合は、保健所や精神保健福祉センター、心療内科・精神科などの専門機関への相談も視野に入れてください。
「ここまで追い詰められてから相談するのは恥ずかしい」と感じる必要はまったくなく、「限界を感じたからこそ動けた」と自分を認めてあげてほしいと思います。
まとめ
本記事では、「介護する家族がつぶれないためのセルフケア」について、作業療法士の視点で解説しました。
介護をしていると、「自分のことよりも、まずは家族を」と考えるあまり、自分の休息や楽しみを後回しにしがちです。
しかし、長く続く在宅介護では、介護者が元気でいることこそが、もっとも大きな支えになります。
がんばりすぎのサインに気づき、小さくても自分だけの時間を確保し、家族やサービスに「助けて」と言えること。それは決してわがままではなく、「在宅介護を続けるために必要な技術」です。
「自分を大事にすること」はわがままではありません。介護疲れでつぶれてしまう前に、どうか存分に自分に優しくしてみてください。
この記事をきっかけに、「自分をケアすること」に少しだけ優先順位を上げてもらえたら嬉しいです。