在宅介護を行うなかで、夜間のトイレ誘導で「寝室↔トイレ」の移動に苦労していませんか。
特に、古い日本家屋で起こりがちなのが、明かり不足により足元の視界確保が難しくなるトラブルです。
歩行は視覚情報をもとにコントロールされているため、明かりの乏しい夜間の廊下移動は、思った以上に介助量が増加しやすい場面になります。
水分補給や服薬はベッドまわりに準備しておけば良いのですが、トイレについては、ポータブルトイレ(以下、Pトイレ)をレンタルしていない場合、どうしても移動することになります。
そこで本記事では、夜間の導線確保の重要性や明かりの必要性について解説していきます。
また、いきなり住宅改修をするのに抵抗感がある方に向けて、100均で手に入るセンサーライトを活用し、低コストで始められる「導線のあかり確保」について、作業療法士(OT)の視点から分かりやすくご紹介していきます。
夜間の移動時に介助量が増加して困っている方や、より安全に歩行を促したい方は、ぜひ参考にしていただけると幸いです。
廊下に追加の照明設置は有効か?
筆者の経験から述べると、夜間の廊下に追加で照明を設置することは、転倒予防にとても有効です。
近年の建築では、寝室を出てすぐの場所に廊下の照明用スイッチがある場合が多いのですが、古い日本家屋では、長めの廊下にそもそも照明が設置されていない場合があります。
また、廊下に照明があったとしても、介護用ベッドを設置するために元来寝室ではない部屋を寝室として使用しているケースでは、手元にスイッチがないことも珍しくありません。
そういったケースでは、足元を明るく照らし、段差や障害物を浮かび上がらせる照明は、とても有効だといえます。
夜間のトイレ誘導が危険な理由?
夜間のトイレ誘導・廊下の移動が危険なのは、前述したとおり、視界の悪さが障害物や段差を見えにくくし、転倒につながる可能性があるからです。
古い日本家屋で起こりがちなトラブルですが、最近の建物でも明かりが不十分であったり、電灯の色によっては、視力が低下したり認知症を患う高齢者の視界を幻惑してしまう可能性があります。
特に、寝起きで覚醒が不十分な状態では、いつも以上に視界が悪くなりがちです。
そもそも、歩行中は、視覚情報から「どこに足を置くか」「どれくらいの幅でまたぐか」「障害物までの距離」を常に更新しています。
このため、暗闇のなかで視界が遮られると、正常な歩行が困難になるという報告もあります。
また、「何十年も住んでいる家だから大丈夫」という安心感や、「節電のために明かりはつけない」という方も一定数存在し、思わぬ転倒を引き起こす可能性があります。
高齢者の在宅介護では、「夜の廊下は危険になりやすい」という前提を家族で共有しておくことが大切です。
- 段差や障害物を見落とす。(躓きによる転倒の危険)
- 薄明りに幻惑されてしまう。(幻視によるふらつきや転倒の危険)
- 暗闇で距離感が掴めなくなる。(壁への衝突やバランスを崩して転倒の危険)
- 視覚情報の更新が出来なくなる。(正常歩行の妨げによる転倒の危険)
在宅介護で使いやすい「あかり」の種類と特徴
廊下に追加するあかりは、大きく分けて「常夜灯タイプ」と「必要なときだけ点くタイプ」の選択肢があります。
常夜灯として使える明暗センサー付きナイトライトは、部屋が暗くなると自動で点灯し、足元の位置を把握しやすくしてくれます。
一方、人感センサー付きライトは、人が近づいたときだけパッと明るくなり、通路やトイレ前などをしっかり照らしたい場面に便利です。
人感センサータイプのライトを、廊下の壁や柱に沿って複数並べると、「光の道」を作るような使い方ができます。
在宅介護では、夜間の導線確保のために天井照明だけに頼らず、足元を重点的に照らすあかりを組み合わせることで、転倒リスクを大きく下げることができます。
100均センサーライトでつくる「安全な夜間の廊下移動」実例
センサーライトの導入が夜間の導線確保に有効だとしても、その効果を実際に確認する前に多額の費用をかけて購入するのは悩ましいかと思います。
実際に作業療法士として在宅介護に関わってきた筆者としては、慣れた家のなかの導線に余計なお金を掛けたくないというご家族様の声をいただくことは少なくありません。
このため、ご家族様とご本人様に分かりやすく説明し、納得していただくために、まずはお試しでセンサーライトを設置して体験していただくようにしています。
とはいえ、筆者も裕福な方ではないので、基本的には100均で用意できる機材を揃えて設置しています。
筆者がOTとして働き始めた頃は、100均で有用なセンサーライトを購入することはできませんでした。
そのため、ホームセンターで蓄光テープを購入して導線部を示すなどしていましたが、十分な明るさが確保できずに頭を悩ませていました。
しかし、最近では100円ではないものの、かなり低価格で揃えることができるため、本当に助かっています。
センサーライト使用例
追加のセンサーライト類は、基本的に廊下内の移動で障害となる段差や物がある場所に設置していきます。
廊下の途中には、人感センサー付きライトやバータイプライトを柱や壁に取り付け、歩き出したタイミングで自動で足元が明るくなるようにします。
トイレの入口や中には、段差や敷居が見える位置にライトを配置すると安心です。
導線は、「寝室 → 廊下 → トイレ」を途切れない光の線でつなぐイメージで整えることで、スイッチ操作をしなくても安全な夜間移動がしやすくなります。
実際に夜間に移動してみて気になる場所に明かりを設置すれば良いのですが、判断がつかない場合は、PTやOTに確認してから設置しても良いでしょう。
参考に、筆者が親戚宅で導線にセンサーライトを設置した様子を写真と動画で紹介します。
このときは、在宅介護をしている親戚から「夜のトイレ←→寝室の移動が心配」と相談されたため、お宅を訪問して導線を確認しました。
寝室からトイレまでの距離が短いこともあり、話し合いの末、DAISOの商品で対応しました。
【センサーライト(バータイプ)】が税込330円、【LED明暗センサー付きナイトライト】が税込330円、単4電池4本入りが税込110円で、合計770円で対応できました。
センサーライト設置後、半年ほど経ちますが、特に問題なく使用できています。
あえて気になる点を挙げると、【センサーライト(バータイプ)】は単4電池が3本必要で、1カ月くらいで電池切れになるため、入れ替えがやや面倒なことくらいだそうです。
Daiso【センサーライト(バータイプ)】



短い距離ですが、ライトのスイッチが階段の側にしかないので、柱に人感センサーライトを取り付けています。

周囲が明るいとライトは点灯しません。暗くなり、人の動きを感知するとライトが点灯します
Daiso【LED明暗センサー付きナイトライト】


トイレの出入り口は、使わない椅子が押し込まれていて暗いと危険!足元を照らす明暗センサーライトを設置しています。


明かりが当たるとライトがOFFになり、暗いと点灯したままになります。トイレの出入りが安全に行えるようになりました。

写真と動画は許可を貰って記事に載せています。
OT目線の「安全チェックポイント」
ライトを設置する際には、「明るければいい」だけでなく、安全性にも気を配る必要があります。
まず、ライトの高さは膝〜足首あたりを目安にすると、足元や段差が視認しやすくなります。
ライトの位置が高すぎると光が直接目に入り、まぶしさで目がくらんでしまうので注意してください。
コンセントから電源をとるライトで延長コードを使用する場合は、必ず壁際を這わせて固定し、廊下を横切らせないようにしましょう。コードが足に引っかかると、それ自体が転倒の原因になります。
また、ライトを壁や柱に固定すると出っ張りができますが、当然、手すり代わりにはなりません。もしつかんでしまうと、マグネットや両面テープごと外れて転倒につながるおそれがあります。
ライトはあくまで「照らすだけのもの」と位置づけ、つかまりポイントにならないような位置に設置することにしましょう。
100均ライトはこんなご家庭におすすめ!
100均のライトを使った夜間の導線対策は、すべてのご家庭に必要なわけではありません。
しかし、いきなり福祉用具や住宅改修に踏み出すのは不安だけれど、夜間転倒は気になっているようなご家庭には非常に有効です。
また、一人暮らしの高齢者や、夜間に見守りが難しいご家庭の「少なくとも廊下だけは安全にしておきたい」というニーズに応えることができるでしょう。
このような場合、低コストで始められ、設置や撤去も簡単な100均のセンサーライトは、試してみる価値が高い選択肢だといえます。
- 大きな工事や高価な福祉用具はまだ迷っている。
- 高齢の一人暮らし、もしくは夜間の見守りが難しい。
- 廊下に照明がなく夜間に導線が真っ暗になる。
- 安価に導線部の照明を確保したい。
まずは試してみよう
100均のセンサーライトやナイトライトは、「いきなり完璧な環境を作る」ための道具というよりは、とりあえず安全な導線を確保するための【お試し】として考えると良いでしょう。
まずは、夜間に危険度が高くなりやすい寝室からトイレまでのルートを家族で確認し、そのルートに沿ってライトを仮置きしてみましょう。
1〜2週間使ってみて、「ここはもう少し明るくしたい」「この位置にライトは不要」など、気づいたことをメモしておくと、その後に福祉用具や住宅改修を検討するときの参考になります。
実際に効果を実感できたら、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談し、より耐久性の高いライトや足元灯へのステップアップを検討していく流れがおすすめです。
まとめ
この記事では、夜間の導線確保を目的として【100均のセンサーライトを使用した照明の例】を紹介しました。
在宅介護における夜間の廊下移動は、家の新しさや広さに関係なく、誰にでも起こり得る転倒リスクを含んでいます。
夜間は筋力や注意力が低下しやすく、「慣れた家だから大丈夫」「節電のために電気はつけない」といった考えが、思わぬ事故につながることがあります。
100均のナイトライトやセンサーライトを使えば、低コストで寝室からトイレまでを「光のレール」でつなぐことができます。
高さや固定方法、コードの扱いに気をつけながら、まずは1つだけでも設置してみることが大切です。
小さな明かりが、夜の不安を和らげ、介護される方と介護する家族の両方にとって、安心感のある在宅生活につながれば幸いです。