家族の介護を考えるときに、多くの人がつまずくのが「介護保険の使い方」で間違いないでしょう。
少し調べればインターネットや書籍、パンフレットなど多くの情報源を見つけることができますが、専門用語や曖昧な記述が多く、読み進めるだけでもひと苦労…。
筆者は職業柄、介護保険や医療保険の知識が必要になるため改定があるたびに読み込んでいますが、正直な気持ちをいえば「面倒くさいので、可能なら介護保険には関わりたくない」です。
職業的に頻繁にかかわる作業療法ですらこのざまなのですから、日頃関わることのない方にとってはまさに「意味不明」なものになると思われます。
実際に、筆者の義実家で義祖母の在宅介護をはじめる際に、介護保険について随分と質問されたものです。
知り合いに詳しい人がいれば、何とかなりますがそれすらいない場合は、「申請が面倒そうだから、もう少し様子を見よう」と先送りになってしまうケースも少なくありません。
この記事では、介護保険の基本から要介護認定、サービス利用開始までの流れを、できるだけ分かりやすく整理していきます。
作業療法士として在宅現場に関わってきた経験から、「ここを押さえておくとスムーズ」という実務的なポイントも合わせてご紹介しますので、ぜひ今後の申請の参考にしてみてください。
介護保険とは?
介護保険は「介護や日常生活の支援が必要な方に対して、介護および介護予防にかかる費用の一部を公的に負担する制度」です。
40歳以上の人が保険料を出し合い、介護が必要になったときにサービスを利用できる公的な仕組みとなっています。
高齢の家族を「身内だけの力」で支えるのではなく、社会全体で支え合うことを目的として作られた制度です。
40歳以上の方なら、「給与から介護保険料が勝手に引かれていてショックを受けた」と感じたことがあるのではないでしょうか。
40代のうちは恩恵を感じることは少ないですが、介護保険は「暮らしそのものを支える」ための制度なので、記憶の隅にでも置いておくと良いでしょう。
注意したいのは、介護保険は申請をしないと自動的には使えないうえに、申請後も自由に使えるわけではない点です。
ただ、「どんなときに、どこまで使えるのか」をあらかじめ知っておくと、いざというときに慌てずにすみます。
介護保険でできること・できないこと

介護保険でできることを一言でいうと、「日常生活を送るために必要な介護や支援」で、これを専門職が手伝ってくれます。
たとえば、入浴や排せつ、食事介助などの身体介護、掃除や洗濯・調理といった生活援助、デイサービスでの入浴や機能訓練、ショートステイでの短期入所、車いすや介護ベッドのレンタル、手すりの取り付けなどが代表的です。
一方で、家族全員分の食事づくりや大掃除、庭木の手入れ、趣味のお出かけの付き添いなど、「生活全体の便利屋さん」のような使い方はできません。
介護保険はあくまで「必要最小限を支える仕組み」と理解しておくと、サービス選びでの期待外れやトラブルを防ぎやすくなります。
要介護認定の申請の流れと必要なもの
要介護認定を受けるまでの大まかな流れは、次のようになります。
まずは、市区町村の介護保険窓口や地域包括支援センターに相談し、制度の概要や申請の仕方を教えてもらう。
そのうえで、本人または家族が要介護認定の申請書を提出。
申し込みのあと、認定調査員が自宅や入院先を訪問し、ふだんの生活の様子や困りごとについて聞き取り調査が行われる。
同時に、市区町村から主治医へ「主治医意見書」の作成が依頼され、病気の状態やこれまでの経過がまとめられます。
これらの情報をもとに審査会で要介護度が判定され、その結果が「要支援」「要介護」などの形で通知される、という順番です。
申請の際には、介護保険被保険者証、本人のマイナンバーが分かるもの、主治医の医療機関情報などを準備しておきましょう。
作業療法士としては、日頃から生活で困っていることをメモで残しておくことをおすすめします。
たとえば、「立ち上がりに時間がかかる」「トイレが間に合わない」といった内容を具体的に書いておくと、認定調査員に説明する際に、慌てたり忘れたりせずに情報を伝えることが可能です。
経験上、入浴と排泄(トイレ)に関する困りごとばかりに意識が向き、それ以外の小さな問題を伝え忘れたり、頑張ればできるポイントを敢えて伝えないといったケースが見られます。
また、認知症のある方の場合、調査員の聞き取りの際に張り切ってしまい、いつもは出来ない動作でも「出来ます!」と自信いっぱいに答えてしまったり、その瞬間だけ動作が出来たりすることがあります。
調査員によっては、それをみて【出来る】と判断してしまうことがあるので、今は出来ているが、いつもは出来ずに困っていることをしっかり伝えてください。

ケアマネージャーって何をしてくれる人?

要支援・要介護に認定されると、次のキーパーソンとして登場するのがケアマネージャー(介護支援専門員)です。
ケアマネージャーは、現場ではケアマネと略して呼ばれる事が多く、本人と家族の希望を聞き取りながら、どのサービスをどれくらい利用するかをまとめた「ケアプラン」を作成する役目を担います。
デイサービスや訪問介護、訪問看護、福祉用具事業所など、複数の事業所との連絡・調整もケアマネの大切な役割です。
さらに、月1回程度の訪問で状態を確認し、必要に応じてサービス内容を見直してくれます。
現場感覚としては、「在宅生活のコーディネーターであり、困ったときの相談窓口」というイメージが近いでしょう。
もし、サービスの状態に疑問や不安があれば、ケアマネに遠慮なく相談してみましょう。

うちのおばあちゃんがデイサービスに通ってるんだけど、本人は合ってないって言ってるんだけ…。

そういった悩みも遠慮せずにケアマネさんに伝えみてね。意外と親身に相談にのってくれるよ。

でも、デイをやめたり変えたりすると、気まずくないかな?

僕はデイケアでも勤務したことがあるけど、やめたり、変えたりする人は、珍しくないから職員は気にしないと思うよ。
よく使われるサービス(訪問介護・デイサービスなど)のざっくり特徴
筆者の経験上の話になります、在宅介護でよく利用されるサービスとして、まず挙がるのが訪問介護(ホームヘルプ)です。
ヘルパーが自宅を訪問し、入浴や排せつ・食事介助といった身体介護、掃除や洗濯・簡単な調理などをおこないます。
次に、デイサービス(通所介護)は、日中に施設に通って入浴や食事、リハビリ、レクリエーションなどを受けるサービスで、家族の「日中の休憩時間」を確保する意味でも大きな役割があります。
また、ショートステイ(短期入所)は、数日から数週間ほど施設に泊まり、集中的な介護を受けられる仕組みで、介護者の体調不良や冠婚葬祭、リフレッシュの際の力強い味方といえるでしょう。
さらに、訪問看護や訪問リハビリ、福祉用具レンタル・住宅改修などを組み合わせることで、その人らしい在宅生活を支えやすくなります。
自費サービスとの上手な組み合わせ方
介護保険は、介護や生活の支援をしてくれますが、それだけでは十分とは言えません。
介護保険だけでは賄いきれない部分を補うのが、自費(保険外)サービスになります。
たとえば、家事代行サービスに掃除や洗濯、買い物、調理をまとめて依頼したり、自費対応の訪問介護で長時間の見守りや付き添いを頼んだりするケースがあります。
また、介護タクシーや送迎付きの買い物支援、民間の見守りサービスなども選択肢の一つです。
費用は全額自己負担になるため、何でもかんでも頼むのではなく、「ここだけは手が足りない」「ここを任せられると家族がかなり楽になる」というポイントに絞って使うのがコツです。
イメージとしては、介護保険で生活の土台をつくり、自費サービスで「不足」を足していくといった感じになります。
家族の体力・時間・仕事との両立を考えながら、無理なく続けられるバランスを探していきましょう。
申請〜サービス開始までに家族が準備しておきたいこと

要介護認定の申請からサービス開始までは、早くても1〜2か月ほどかかることが多いです。
この待ち時間で何もしないのはもったいないので、家族側でもできる準備を進めておきましょう。その後の動きがスムーズになります。
例えば、病名や服薬内容、これまでの入退院歴、日常生活で困っていることをメモにまとめておきます。
次に、「できれば自宅で最期まで暮らしたいのか」「状況によっては施設も視野に入れるのか」など、家族の希望やNGラインを共有しておくことも大切です。
さらに、自宅内の危険ポイント(段差・マット・コード・暗い廊下など)をチェックし、簡単に改善できるところから手をつけていきます。
家族の役割分担や毎月の予算感も、ざっくり話し合っておくとケアマネとの相談がぐっとラクになります。
まとめ
この記事では、介護保険の基本的な情報や申請までの流れを簡単に解説しました。
介護保険は、一見とても複雑な制度に見えますが、ポイントを押さえてしまえば「在宅介護を支えてくれる心強い仕組み」に変わります。
まずは、介護保険がどんな制度なのか、どこまでできてどこから先は自費になるのかをざっくり理解しましょう。
そして、要介護認定の流れを知り、ケアマネージャーという心強い味方の存在を頼りにしながら、訪問介護・デイサービス・ショートステイなどのサービスを組み合わせていきます。
足りない部分は自費サービスで柔軟に補い、その間に家族は情報整理と住環境の見直しを進めていきます。
こうしたステップを踏むことで、「よく分からないまま制度に振り回される介護」から、「制度を味方につける介護」へと変えていくことができるのです。

制度の全体像をつかんで、賢く頼れるようにしておきましょう!