【OT解説】高齢者の足のむくみを和らげる安全な運動とケアの手法

本記事はPR・広告を含みます

家族の足のむくみで悩んでいませんか。「靴下の跡がくっきり残って消えない」「足がパンパンに腫れて、触れるだけで痛がる」。

介護が必要な生活が長くなると、足のむくみやそれに伴う痛みに悩まされ、なかなかすっきりしないケースがよく見られます。

在宅介護をされているご家族はもちろん、介護施設で働くスタッフの方々も、利用者さんからの痛みの訴えに「どうにかして楽にしてあげたい」と日々悩まれているのではないでしょうか。

私の妻も介護現場で働いていますが、同じような悩みをよく耳にします。

むくみがひどくなると、歩くのを嫌がったりケアを拒否されたりすることもあり、介護者としても焦りを感じてしまいますよね。

本記事では、作業療法士としての視点と私自身の介護経験を交え、ご家庭や介護現場で今日から安全に実践できる「むくみや痛みを和らげるためのケア」について詳しく解説します。

記事内の表記(マッサージ)についての注意!

本来、治療を目的とした「マッサージ」を業務として行うには、国家資格(あん摩マッサージ指圧師)が必要です。

本記事でご紹介する実践方法は、専門知識のないご家族や介護職の方でも安全に行える「軽擦(けいさつ=優しくさするタッチケア)」の手技となります。ただし、読者の皆様へのイメージの伝わりやすさや馴染みやすさを考慮し、本記事内ではあえて「マッサージ」という表現を使用しています。あらかじめご了承ください。

【作業療法士が解説】高齢者の足のむくみは和らげることができるのか

加齢や活動量の低下による一般的なむくみであれば、適切なアプローチを取り入れることで、状態を和らげることが期待できます。

血液やリンパの流れを物理的に促すケアを行うことで、滞っていた水分が移動すると、足の張りや痛みがスッと和らぐことがあります。

ただし、すべてのむくみが運動やマッサージだけで対処できるわけではありません。

心疾患(心不全など)や腎機能障害といった全身性の病気、あるいはお薬の副作用が原因でむくんでいるケースも多々あり注意が必要です。

このような場合は、むやみに触るよりも主治医による医学的な治療が最優先となります。ケアを始める前に、まずは全身状態の確認を必ず行ってください。

高齢者の足のむくみと「痛み」の原因とは?ふくらはぎの筋ポンプ作用を解説

足がむくむ最大の原因は、ふくらはぎの「筋ポンプ作用」の低下と重力の影響です。

高齢になると筋肉や骨だけでなく、血管や心臓の機能も低下していきます。

さらに若い頃に比べて歩く機会が減り、座りっぱなしや寝たきりの時間が長くなるため、足元に下りた血液や水分を心臓へ押し戻す力が弱まり、水分が滞留してしまうのです。

この、足に水分が滞留した状態が「むくみ(浮腫)」と呼ばれる状態です。

では、なぜむくみができると「痛み」を感じるのでしょうか。

足に余分な水分(細胞間質液)が過剰に溜まると、風船がパンパンに膨らむように皮膚が内側から強く引っ張られます。

高齢者の薄く弾力を失った皮膚が限界まで引き伸ばされると、強い緊張状態になり、知覚神経が刺激されてピリピリとした痛みや強い重だるさを引き起こすことがあります。

水分が足に溜まるということは、実際に足そのものの重量が増加するということです。

これにより、筋力が低下した高齢者はさらに歩きづらくなるという悪循環が起きてしまいます。

見た目以上に「足が重くなっている」という感覚は、本人にとって想像以上のストレスになっています。日々のちょっとした声かけでも、その負担感に寄り添ってあげることが大切です。

マッサージしてはNGなのか。触ってはいけない「危険なむくみ」の見分け方と3つのサイン

安全なケアを行うためには、絶対にマッサージなどをしてはいけない「危険なむくみ」を見極めることが非常に大切です。

最も注意したいのは、「深部静脈血栓症(DVT)」です。

エコノミークラス症候群という言葉を聞いたことはないでしょうか。エコノミークラス症候群は、長時間同じ姿勢を取り続けることで起こるDVTの通称ですが、DVT自体は手術後の安静や寝たきり、脱水など様々な原因で起こり得るため、両者はイコールではない点に注意してください。

足の奥の血管に血栓(血の塊)ができている状態で揉んでしまうと、血栓が剥がれて肺の血管に詰まり(肺塞栓症)、命に関わる重大な事故を招く恐れがあります。

また、足が赤く腫れて熱を持っている場合は「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」などの細菌感染が疑われ、不用意に触れると炎症が一気に悪化する危険性があります。

しかし専門的な視点から言えば、血管の中の問題である血栓などは、エコー検査などを行わない限り外見から完全に判断することはできません。

注意すべき3つのサイン

  • 「片足だけ」が急激に腫れていないか:加齢や心機能の低下などによるむくみは、重力の影響を受け基本的に「両足」に均等に出現します。昨日まで普通だったのに「急に片足だけがパンパンに腫れ上がった」などの場合は、特定の血管が血栓で詰まっている可能性などを示す強い危険信号です。
  • 熱を持っている、赤や紫に変色していないか:むくんでいる部分に触れて明らかに熱い(熱感がある)、または赤や紫がかった変色がある場合は、細菌感染や強い炎症が疑われます。通常の水分滞留によるむくみは、冷たいことが多いのが特徴です。
  • ふくらはぎの奥に「強く鋭い痛み」はないか:むくみによる重だるい痛みではなく、ふくらはぎを軽く握った時や、足首を上に反らせた時に「ピキッとした強く鋭い痛み(奥が痛む感覚)」を訴える場合は、深部の静脈に血栓が詰まっている可能性があります。

上記以外にも、外見に目立った異常がなくても注意すべき「状況」があります。

たとえば、体調を崩して数日間ベッドからほとんど動いていない長期の寝たきり状態や、水分がしっかり摂れていない脱水気味の時は、目に見えなくても血栓ができやすい状態になっています。このような状況の時は、むやみに足を揉むのは控えましょう。

高齢者の体調は変わりやすいため、「いつもと違う」「なんだかおかしい」、あるいは急な息苦しさを伴うような時は、心疾患に関連するむくみの可能性も考えられます。

ケアをする上で大切なのは、「迷ったら触らない(何もしない)」という勇気を持つことです。

少しでも疑わしいサインがある時は絶対に足に触れず、まずは医師や看護師に相談してください。

ストップ!足に触れる前の危険サイン確認

以下の項目で当てはまるものにチェックを入れて「判定する」ボタンを押してください。

上記のチェック表は基本的にひとつでも当てはまれば、担当医に即連絡した方が良いでしょう。エコノミークラス症候群については、健康な人が長時間同じ姿勢(座る)を続けた場合にも発生リスクがあります。適度に姿勢を変えたりして危険を回避しましょう。

高齢者の足のむくみを放置するリスクとは?皮膚剥離や廃用症候群を招く負の連鎖

足にむくみができた際に、「ただのむくみだから」と放置するのは非常に危険です。

パンパンに張った状態が続くと、皮膚はティッシュペーパーのように薄く脆くなることがあります。

この状態で少しでもどこかにぶつけたり、強く擦ったりすると、皮膚がズルッと広範囲にめくれる「皮膚剥離(ひふはくり)」というケガに繋がってしまうことがあります。

さらに深刻なのが「廃用症候群」への移行です。

足が重くて動かしづらい、あるいは痛いからと歩くのを嫌がるようになると、「筋ポンプ作用」が働く機会が減少するだけでなく、筋力が低下していき、むくみが悪化しやすくなります。

むくみが強くなると、足裏の感覚が鈍くなったりしびれたりすることもあります。その状態ではしっかりと床の感触を掴めないため、歩くのを嫌がることも珍しくありません。

実際に歩いてもらう場合は、転倒しないようにしっかりと介助する必要があります。

活動意欲そのものが失われたり、歩行機能に大きな問題が生じたりする前に、むくみというサインを見逃さず、早い段階でケアに介入することが大切です。

むくみケアを効果的に!ベッドや車椅子でのポジショニングと事前準備

ケアを始める前に、生活の中でちょっとした工夫をすることで、より良いサポートが期待できます。

まずは、ベッド上で休んでいる際の「ポジショニング(姿勢づくり)」です。

足元にクッションや丸めたバスタオルを敷き、足を心臓より少し高い位置に保ちます。これだけでも重力を利用して水分を戻しやすくなります。

次に、座っている時のポジショニングです。車椅子に座りっぱなしで過ごしていると、足がフットレストに固定され、普通の椅子以上に足を動かす機会が減るため、むくみが強く出現しやすくなります。

対策として、車椅子や椅子の前に別の椅子を置き、そこにクッションを敷いて足をのせる時間を作ってみてください。

ずっと上げっぱなしにする必要はなく、「1時間足を下ろしていたら15分は上げておく」といったペースで定期的に実施するだけで良いでしょう。

そして、実際に足のケアを始める前には、部屋を暖かくして寒さを感じさせないようにしましょう。

さらに摩擦で皮膚を傷つけないよう、アロマオイルや保湿クリームをたっぷり手に馴染ませてから触れるようにしてください。

血流が良くなっているお風呂上がりや就寝前に行うのがおすすめです。

「眠る前に少し足をさすりましょうか」などと優しく声をかけ、もし相手が強く拒否するようであれば無理強いはしないようにしましょう。

できるだけリラックスできる雰囲気を作ることも大切なポイントです。

【今日からできる】高齢者の足のむくみを和らげる運動とマッサージの手順

むくみに対するケアは、足のポンプ作用を促す「運動」や「マッサージ」が主体となります。

どちらも医師に確認の上、無理のない範囲で行いましょう。

【手順解説】足の筋ポンプ作用を促す「簡単エクササイズ」

ふくらはぎや太ももなどの足の筋肉を動かして、滞った血液や水分を心臓へ押し戻す「筋ポンプ作用」を促します。

ご本人が自力で動かせる場合は声掛けを、難しい場合は足裏や足首に優しく手を添えて動きをサポートしてあげてください。

自分で動かせる場合でも、最初は口頭での指示が上手く伝わらないことがあるため、動きをサポートするか対面で一緒に動かして見せると分かりやすくなります。

つま先上げ

仰向けや椅子に座った状態で、かかとを床(またはベッド)につけたまま、つま先をゆっくりと上に向けて反らします。

滞りを和らげるための基本となる動きです。

はじめは10回くらいから試してみて、余裕があるようなら回数を増やし無理そうなら減らしてください。

むくみが強く足首が動かせないようなら、軽くサポート(つま先に手を添えて上方向に誘導)してあげましょう。

サポートは無理やりに動かすことが目的ではないので、痛みが生じない範囲でやさしく、ゆっくりと行います。

  • 関与する筋肉:前脛骨筋(すねの筋肉)
  • 医学的根拠:つま先を上げることで、すねの筋肉が収縮し、ふくらはぎの筋肉がストレッチされます。足首の柔軟性が高まることで、下肢の静脈にある「静脈弁」の働きがサポートされ、滞留した水分が物理的に心臓方向へ静脈還流が促進されます。

踵上げ

椅子に座った状態で、つま先は床につけたまま、踵をグッと高く浮かせ、ゆっくりと下ろします。

この往復運動により、ふくらはぎの筋肉がポンプのようにしっかりと伸縮します。

踵上げもつま先と同じように5回くらいから開始し、無理のない範囲で回数を調整してください。

サポートも必要に応じて無理のないように実施します。

  • 関与する筋肉:下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋などふくらはぎの筋肉)
  • 医学的根拠:ふくらはぎの深部には、スポンジのように大量の静脈血を蓄えている「ヒラメ筋静脈洞」と呼ばれる太い血管の集まりがあります。かかとを上げることでふくらはぎ(第2の心臓)が力強く収縮し、ここに溜まった血液を心臓へと絞り出す「筋ポンプ作用(ミルキングアクション)」が働きます。

膝の曲げ伸ばし(片足ずつ)

椅子や車椅子、ベッドの端に座った状態で、片足ずつゆっくりと膝を真っ直ぐに伸ばし、再び下ろします。

太ももの大きな筋肉を動かすことで、足全体の血流が引き上げられやすくなります。

最初は5~10回ずつ実施してみて、余裕があるようなら少しずつ回数を増やしてみましょう。

  • 関与する筋肉:大腿四頭筋(太もも前面)、ハムストリングス(太もも裏面)
  • 医学的根拠:足元から押し上げられた血液やリンパ液は、膝裏を通過して太ももへと向かいます。人体で最大の体積を持つ大腿四頭筋を収縮させることで強力なポンプ作用が発生し、心臓へと向かう静脈還流量が増えやすくなります。

曲げ伸ばしだけでは物足りないようであれば、膝を伸ばしたまま10秒間キープするなどの調整をしても良いでしょう。ただし、あくまでも筋トレ目的ではなく筋肉のポンプ作用を促すことが目的なのを忘れないようにしてください。

足踏み

椅子などに座った安定した状態で、左右の足を交互に持ち上げて足踏みをします。太ももをしっかりと上げることを意識しましょう。

足踏みも対象者の身体の状態に合わせて回数を調整してください。

足の痛み以外にも呼吸が苦しいなどの症状があれば運動を中止して医師に連絡をお願いします。

  • 関与する筋肉:腸腰筋(足の付け根)、大腿四頭筋、下腿三頭筋など足全体の筋肉
  • 医学的根拠:足全体の筋肉を連動して動かすことで、足先から太もも、そしてそけい部(足の付け根)のリンパ節へと向かう血流とリンパ液の流れを促進します。股関節を動かすことで骨盤周りの血行も改善され、下半身全体のむくみのケアに役立つと期待されています。

どの運動も筋トレが目的ではないので、負荷をかけ過ぎることのないようにしてください。また、これらの運動と以下のケアを実施する前に、必ず担当医の許可を貰うようにお願いします。高齢者や特定の疾患を持つ方の場合、思い込みや感情で先走ると思わぬ事故につながることがあります。

【痛みの和らぎ】優しくさするタッチケア(軽擦)の方法

筋肉を動かした後は、マッサージを行い水分の戻りを補助しつつ、同時にリラックス感を引き出します。

オイルや保湿クリームをたっぷり塗った両手で、足先や足首を優しく包み込みます。

そこから膝の裏、太ももの付け根へと、心臓に向かってゆっくりと手を滑らせてください。

ここで「強く揉む」「指圧する」のは厳禁です。高齢者のデリケートな皮膚を傷つけないよう、皮膚の表面直下にある余分な水分を、手のひら全体の温もりでアイロンをかけるようにスッと優しく押し流すイメージで行うのが最大のコツです。

作業療法士(OT)が伝える、看取り介護での後悔とむくみケアの実感

私自身、作業療法士の資格を取る前に、自宅で末期がんの母の看取り介護をしていました。

当時は介護やリハビリの知識がなく、よかれと思って日常のお世話をすべて先回りして行っていました。

結果として、母が自ら動く機会を奪ってしまい、足のむくみを酷くしてしまったのです。

そんな悩みを抱えていた時、訪問リハビリに来てくれていた作業療法士から、アロマオイルを使った下肢のリラクゼーションを教わりました。

知識や技術は持たないため、拙いマッサージだったものの、教わった通りに母に行うと、「痛みが軽くなった気がする」と喜んでくれたという経験があります。

その後、専門学校へ進み、臨床実習の中で理学療法士の主任からむくみに対する専門的なアプローチを学びました。

その時、母の介護で行っていた「素人の優しいタッチング」と、プロの「リンパや血流への根拠あるアプローチ」が明確に繋がり、実際の利用者さんにもしっかりとした変化を感じてもらえるようになったのです。

この経験は、施設勤務を始めた後も私の大きな武器となり、利用者さんのケアやご家族へのアドバイスに活きています。

【まとめ】高齢者の足のむくみケアで家族も安心。安全な技術を学ぶために

今回は、介護現場で見かけることが多い「足のむくみ」について、原因や影響、自宅でも行える対応などを解説しました。

足のむくみや痛みを和らげる優しいアプローチは、ご家族や利用者さんの生活の質を支え、心まで安らぐコミュニケーションの時間となります。

しかし今回お伝えしたように、高齢者へのマッサージには、皮膚剥離や血栓症など素人判断では危険なリスクが潜んでいるのも事実です。

思わぬ事故を防ぎ、より安全に痛みを和らげるには、ある程度の専門的な知識が必要になってきます。

ただ、予備知識のない状態から独学で勉強を始めるとなると、知識面はもちろん、「実際にどの程度の力加減でさすればいいのか」など、感覚的な部分を把握し辛く大変なことも確かです。

もし、ご家庭や現場でより安心なケアを取り入れたいとお考えなら、比較的短時間で分かりやすく指導してくれる講座を活用してみてはいかがでしょうか。

個人的には、専門用語を使わずに「安全な手技とアロマの活用」を体系的に学べる『介護リハビリセラピスト通信講座』がおすすめです。

大切なご家族を安全に癒やしたい方、現場でのケアスキルに自信を持ちたい方は、ぜひ詳細を確認し、安心できるケアへの第一歩を踏み出してみてください。

何度も繰り返してしつこいようですが、今回ご紹介した運動やケアを実施する前には必ず担当医に確認して指示をもらってください。自宅での介護は最終的に自己責任に繋がってしまうので、どれだけ注意してもし過ぎることはありません。